あ、このフクロウ知ってる!
地元の図書館で展覧会のチラシを漁っていたある日、思わず「あ!」と声を出しそうになりました。中央にデーンとあしらわれているこちらのフクロウさん、私、以前、ポストカードをいただいたことがあったのです! 絶対に間違いない‼
ポストクロッシングを通して仲良くなって、一時、ポストカードを送りあっていたオランダ人の大学生(当時)B君が、私の誕生日に送ってくださったかわいいカードです。いただいたのは、2015年でした(は~。随分前だね)。
Hoornuil / Horned Owl, 1915
いただいたときは、アーティストのことなどまったく気にもせず、よって調べもせず、ただ、「すごく印象的なフクロウの絵だな」くらいにしか思っていませんでした。
それが今、日本にやってきているんです! やっと時間ができたので、開催中の東京ステーションギャラリーに行ってきました!
JR東京駅丸の内北口改札横のギャラリー入り口には、やはり、こちらのフクロウさんがお出迎えでした。
チラシに書いてある解説によると、サミュエル・イェスルン・デ・メスキータは19世紀から20世紀初頭のオランダで活躍した画家、版画家、そしてデザイナーで、当時のオランダで最も重要なグラフィックデザイナーの一人でもあったそうです。確かに、彼がデザインを担当した雑誌も展示されていましたが、ため息が出るほどお洒落でした。
そして、平面を次々と変化するモザイク模様などで埋め尽くした表現で知られるM.C.エッシャーの先生でもあったんですね。
メスキータはポルトガル系ユダヤ人だったため、残念ながらゲシュタポに逮捕されました。彼が1944年に亡くなっているということは、はい、そうです、アウシュヴィッツに送られたからなのです。エッシャーたちはメスキータ先生の残した作品を、戦時中、必死に守り抜きました。そのおかげで今日、私たちがメスキータの作品を楽しめるというわけです。没後75年の今年、回顧展が日本で初めて開かれたのでした。
メスキータの運命を知らなくても、作品が放つ影のようなものが感じられ、ちょっと切なくなります。でも、それを上回る圧倒的な魅力に、会場にいた方々も吸い込まれているような感じでした。
フクロウさんの本物と対面したとき、そのつぶらな瞳に射抜かれました。目と目を合わせて、何となく会話ができたような気持ちにすらなったのです。
会場を出ると、主だった作品を大伸ばしにしたバナーが飾ってあり、ときめきます。
私のお好みはこちら。
息子を題材に取った作品の一つです。
そしてもうひとつ。
国の重要文化財だけあって、東京駅赤レンガ駅舎内のギャラリーは、雰囲気も最高です。
作品のポスターやポスカードを買う気満々でギフトショップに行って、がっくりーー。欲しかった作品のポストカードはありませんでした。ひょっとして売り切れてしまっていたのかもしれません。
だから、B君からもらったフクロウさんのポストカードは私の宝物です。展覧会の作品リストでは、フクロウさんは「個人蔵」となっていますが、私の持っているポストカードには、Joods Historisch Museum(アムステルダムにあるユダヤ人博物館)のコレクションと記載されていますので、こちらに行けば見られるかもしれません。
オランダ人のB君がこのカードを送ってくれなかったら、私はメスキータのことを知ることはなかっただろうと思うと、ポストクロッシングは単なるポストカードのやり取りを超えたすごいコミュニケーションだなと、しみじみ思います。
近々、久しぶりにBにポストカードを送ろうかな。