郵便とリアルでトラベルライフ

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ノルウェイの森を読み直したわけ

とある休日、夫とウォーキングをしていたときにぶち当たった怪しい門構え。「和敬塾」とありました。

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なぜかとても気になる~。説明板を読んでいると、夫が、「ここ、確か、村上春樹の小説に出てくるんだよ。もちろん、名前ははっきりとは書いてないけれど、本人もいたことがあるとかで、ここだと言われている」と、面白いことを言い出しました。

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「へえ、どの小説?」

「うーん、すぐには分からん。でも、持っているはずだから、帰ったら調べる」

そして、その小説とは、『ノルウェイの森』だったのです。

 

≪昔々、といってもせいぜい二十年ぐらい前のことなのだけれど、僕はある学生寮に住んでいた。(中略)その寮は都内の見晴らしの良い高台にあった。敷地は広く、まわりを高いコンクリートの塀に囲まれていた≫

 

こんな風に描写されていますが、確かに高台にあることは間違いありません。現在は、高いコンクリート塀に全面囲まれているわけでもありませんし、「アパートを改造した刑務所かあるいは刑務所を改造したアパートみたいな印象を見るものに与える」と形容された学生寮の建物は、きっと、村上氏の時代以降、建て替えられたんじゃないかなと思われます(正確には分からないけれど、少なくとも刑務所を連想させる建物ではないような気が……)。

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テニスコートがあることは、ちらっとのぞいただけで確認できました。「この都心の一等地に、ずいぶん贅沢な学生寮があったものだ」というのが第一印象です。

ノルウェイの森』にあるように、国旗掲揚が今も行われているのか、興味あります。真相は分かりません。

 

主人公のワタナベがルームメイトの“突撃隊”から蛍をもらうシーンが出てきます。ちょっと風変わりなこのルームメイトが、つっかえながら言うせりふ。

「ほら、こ、この近くのホテルで夏になると客寄せに蛍を離すだろ? あれがこっちに紛れこんできたんだよ」

そうなんです。和敬塾から歩いてすぐのところに、椿山荘があります。そこでは毎年、蛍を鑑賞するイベントが行われます。ここ十年くらいのことかと思っていたんですが、この小説が書かれたころにはすでに始まっていたんですねえ。一度だけ見に行ったことがあります。お手軽に東京で蛍を見るにはうってつけです。

和敬塾は、そういうわけで今でも男子寮があるのですが、その本館も健在です。ここはまたの名を「旧細川侯爵邸」といい、熊本のお殿様のお屋敷だったわけです。1936年に細川家16代当主が建てた家族邸宅が今でも残されているのですね。私が通りかかった日はちょうど、結婚式が行われていましたし、『ノルウェイの森』を含め、ドラマや映画の撮影にも使われるみたいです。

 

和敬塾の塀の横を歩いて下っていくと、間もなく永青文庫が見えてきます。

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細川家の屋敷跡に、細川家のお宝を保存、展示している、プチサイズの美術館です。建物自体も昭和初期のもので、年代を感じさせる趣ある建物ですよ。

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この日の散歩の目的地は、新江戸川公園でしたが、寄り道が長くなりました。

永青文庫と公園はつながっているはず(だって、もともとは同じお屋敷だったんだもん)。何とかお屋敷内移動をしたいと試み、何だかわからない丸いものをくぐり、「こっちでいいのかな~」と半信半疑で進んでみました。

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さらに、どんどん怪しい雰囲気に負けそうになりながらも、サインを信じて降りていくと、やがて、文京区が管轄する新江戸川公園の敷地内に入っていきます。

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区内にある大名庭園(六義園小石川後楽園)は都の持ち物なので、入園料をとられます。だったら、ここは無料で、ちょっと深呼吸するにはうってつけです。

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お庭の中心に大泉水を配置し、その周りを散策できるようにデザインした回遊式庭園というところは、ちゃんと大名庭園の要諦を押さえてあります。

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赤とんぼが止まっていたり、

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カメがひなたぼっこしていたり、

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本当に気持ちよくて、ふと空を見上げたら、大好物の飛行機が飛んでいました。小っちゃくてみえないでしょうけど、空の色がきれいでしょ!!

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入り口の門の近くには、見事な松も。

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 この公園の脇を流れる神田川は桜の名所。本当に堪能できます。あまり教えたくない、文京区の見どころです。

私たちは新江戸川公園を裏から入り、入り口から出てきました。

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すぐ脇にもすごい建物が残っていました。細川家の勉強所だったということですが、老朽化が激しく、現在は使用中止。

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話があちこちしましたが、散歩から戻って、小説の『ノルウェイの森』をとりつかれたように読みました。緑の実家や引っ越したアパートが私の生活圏に存在してることが分かり、小説が設定されている1970年ごろの風景を想像してみました。小説の中では大学生の緑。私よりだいぶお姉さんなんだなと思うと、おかしな感じです。

秋は本を読もうと思いました。