箱館売ります
新幹線開業で話題の函館。だからというわけではありませんが、2月に一度は旅行を計画し、仕事の都合で直前に断念していたのを、このほどリベンジできそうです。私は飛行機で行くんですがね。で、函館関係の本をあさっていたところ、『箱館売ります』という本を発見、ただいま読了。
下巻の解説で中江有里さんも書かれていますが、この小説のもとになっている「ガルトネル開墾条約事件」のこと私も全く知りませんでした。プロシア人のガルトネル兄弟が、蝦夷政府総裁の榎本武揚から、99年にわたって箱館(のちに函館と改称)の開墾地を借り受けるという契約を結び、後日、明治政府が賠償金をもって解約したという外交事件のひとつでした。
ちょっと調べてみると、面白いこと、面白いこと。ガルトネルは事実、この条約事件の前から農業を行っていて、リンゴ、洋ナシ、サクランボといった西洋の果物が、彼らの手によって日本で初めて栽培されたといいます。
この小説は、同事件の背景に大国ロシアの思惑がうごめいている、という筋立てなのですが、それが真実かどうかはともかくも、プロシア人が農業を行ったことが、現在の北海道ーーひいては日本全国ーーの農業にも大きな影響を残していることが、すごく興味深い! こういうことを、高校の日本史の時間に教えてもらえたら、歴史の一こまが「現代」とリンクされて、歴史の勉強が面白味を増しただろうな、なんて思ったりします。
もちろん、ここまで私が関心を持ったのも、近く、函館を旅する自分がいるからなんですけれどね。
ガルトネルが植林したブナ林が、函館市の近くの七飯町に残されているというのも、ロマンを感じます。
今の私には、函館にまつわるあれこれが、急にカラフルにリアリティーを持って、自分の心に刺さっていくという実感があります。今まではかすりもしかなかったよその土地のことが、いざ、旅をすると決めたとたん、実際に旅立つ前から自分の関心事になるというのも、旅の醍醐味かもしれません。