岩の教会ーー角田光代さんつながり
最新号の某雑誌で、角田光代さんが「私のお気に入り」として紹介しているフィンエアー。その記事中に、ヘルシンキにあるテンペリアウリオ教会(Temppeliaukion kirkko)が出てきます。岩をくりぬいて作られたその教会の建物にいたく感激した角田さんは、そこで得たインスピレーションが、『空中庭園』という作品に登場する「光の教会」の元になったといいます。
テンペリアウリオ教会がとても好きな私には、あの教会がどのように変化して登場しているのか興味がわき、角田さんの小説を読んでみました。
「北欧の町にそれはあると言う。教会の内部には照明器具がいっさいなく、天井がガラスになっていてる。明かりはすべて、天窓からさしこむ自然光だけなのだそうだ。そこもやっぱり岩をくりぬいて造った建造物らしい」
とまあ、こんな感じで描かれている場所で、そっくりそのまま、テンペリアウキオ教会だというのでもないと思いますが、自然光が注ぎ込んでくる感じが非常に印象的だったのでしょう。
私達が訪れたとき、パイプオルガンの調整中か、オルガニストの練習中なのか、いずれにせよ、音色が響き渡って、以前に訪れたときとは違って、空気が張りつめた感じがしたものです。本物のミサになれば、きっと、すごく荘厳な雰囲気になるのでしょうね。
小説に書かれているような照明器具の有無について、私は気にもとめなかったのですが、「光」と言えば、壁面(と言っても岩がむき出しになっています)にチラチラとキャンドルの炎が揺れていて、それがまた、どことなく幻想的な雰囲気を醸し出しています。
この教会の構造は、文字通り岩盤をくりぬいてありますから、天井部分は基本的に岩、ということになります。教会を後にし、左方向に回り込んでいくと急な登り口があるので、ちょっと失礼して、教会の屋根部分に近づいてみました。敬虔な信者さんなら、目をむいてお怒りになるかもーー胸がちくっと痛みましたが、好奇心には抗えず、心の中で「失礼します」と何度が唱えました。角田さんは、ここに行かれたのかしら?
雨が降った後、カラリと晴れて、水たまりに反射する光がまぶしかったこと。でも、これ、夕方なんですよ。