郵便とリアルでトラベルライフ

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語学学習の近道

そんなもん、ない!

ない、ない、ない!!

赤ちゃんが言葉のシャワーを浴びて、少しずつ母語を獲得していくその総時間を、たったの数か月で埋められるはず、ないじゃないですか?

ほとほと呆れるできごとが、先週の日本語くらぶで起こりました。

その「困ったちゃん」は、中国のある地方都市から日本の大学院進学を目指して来日したばかりのAさん。受付に座っていた私は、

「初めてですか? 名前をここに書いてください」

と、日本語で言いました。このくらいは大抵、どなたでも分かりますし、よく分からなくても何とかなることがほとんどです。が、Aさんはいきなり

「English, Please」

とのたまったのです。しょーがないから出血大サービスで英語でご案内し、英語を使える男性スタッフが彼女の担当になりました。私たちのくらぶは、一回2時間で、1時間お話ししたら、ティーブレイクがあります。休憩時間の後、Aさんの相手を私に割り振られたので、お話ししたのですが……。

日本語がたどたどしいのは、まったく構いません。少しでも日本語に慣れてもらうために、私たち日本語ネイティブのボランティアがいるんですから、できなくても当然なんです。

しかし、Aさんは自分のたどたどしい日本語にイライラしてしまって、どうしても英語にスイッチしてしまいます。でも、英語もそんなに達者なわけではないので、私が英語でしゃべっていると、時々分からなくなって、表情が曇ります。そのことは気になりましたが、日本語くらぶの時間は、言葉の練習だけでなく、少しはリラックスしてもらうという側面もあるので、英語の方がストレスがないなら、少し英語でおしゃべりしてもいいや~と思っていたら、今度はこう来ました。

「先生(注:私たちは先生じゃないんですけど、こう呼ばれることは多いです)、私は英語を話すためにここに来たのではありません。日本語でお願いします」

↑↑↑これは、英語で言われました。

これには頭に来ましたね! べつに私はAさんと英語で会話したいなんて、これっぽっちも思ってませんよ! でも、あなた、日本語で何言ってもわからなくて、すぐ、

「English, Please」

と言うじゃん! で、しょーがないから英語でしゃべってあげてたら、今度は、「英語の勉強に来たんじゃない」ってか? 勘弁してくださいよ~。

もう、Aさんに分かろうが分かるまいが、私ははっきり言いました。

日本語学習に近道はない。ただ、ひたすら日本語を読み、話し、聞いて、慣れるしかない!

そう思いませんか? 私たち日本人は、そうやって日本語を習得したんじゃ!

Aさんは中国で医学部を卒業し、日本の医大の修士課程に行きたいそうです。そんなこと、そもそも可能なのか知りませんが(だって、日本の医学部って6年制ですよねぇ)、ともかくそういうご希望。1年以内、いや、それより早く、大学院受験に耐えうる日本語を習得しないといけないわけです。日本語学習歴は、一応、1年ほどだそうですが、医学部の勉強が忙しくて、ほとんど日本語は出来なかったとか。あせる気持ちはよく分かりますが、あせってもしょーがない。

実は私、7月に、とある言語の学習を始めておりまして(フィンランド語は残念ながら挫折)、いきなり、文字を覚える段階で大きな壁にぶつかりました。音読して、書いて、覚えるしかないのはよく分かっているのですが、ちょっとやって覚えられないと、自分のバカぶりにいらついてしまうのです。

それでも倦まずに続けているうちに、一瞬、パッと目の前がちょっとだけ開かれた感じがするときが訪れました。要するに、ある程度、その言語の情報が私の中にたまった結果、「分かった!」という感覚がプレゼントされた感じーーかな。そこで、私は決めました。

教科書を丸暗記しよう。

まず、教科書の会話文を言えるように覚え、次に自分で言いながら、同時に書く、ということを繰り返しております。まあ、よく間違えること、間違えること。でも、そこで苛立ったらおしまいです。何度もやっていれば、少しずつ間違いは減っていきます。かたつむりのような速度でも進歩していることが分かれば、頑張れるというもんです。昨日まで分からなかったことが、今日は自分の身についているということは、素晴らしいですよ。

だからAさん、あなたも、教科書をバカにしないで、でもバカになってすべてを丸暗記してほしい。あなたの中に日本語の音や単語がたまっていけば、いつか、パッと「分かる」瞬間が来ると信じて。文法のことを心配するのは、それからでも全然遅くないです。無い袖はふれぬ。覚えていない日本語を話せることは、絶対にないのであ~る。

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