郵便とリアルでトラベルライフ

旅が大好き! Postcrossingを始めてからハガキで世界旅行。楽しいよ♫

遠刈田こけし旅 佐藤英太郎さんに会いに

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こけしと工人さんに会いに、遠刈田へ一人旅。目指す佐藤英太郎さんの工房へは、迷うことなく到着したものの、何となく強烈なオーラを感じ、ビビる私。

「でも、ここまで来たんだから、様子だけ伺ってみよっか、なぁ……」と、文字通り、おそるおそる近づいていくと、中から、相手を射抜くような視線を感じ、ああ、遂に目が合ってしまいました! そうです、かの、有名な佐藤英太郎さんご本人です!

 「あーん、もう引き返せない」

蛇ににらまれたカエルの気分で、最後は開き直って

「こんにちは!」

と引き戸を開けて、ずんずん入っていきました。

「よっ、らっしゃい! こけし、見に来たの?」

と、思いがけず優しく声をかけていただき、結局、中の方まで上げていただき、おしゃべりに花が咲き、こけしを買い(『俺だって、客を見てるからね』と言われましたが、結局は無事に売っていただけました)、ここではちょっと書けないような最大級のおもてなしを受けたのでした。アポなしだったにも関わらず、長い時間を私の訪問に費やして下さって、本当に、本当にお世話になりました!

佐藤さんがお話しされたことで、まず、私が打ちのめされたのが、墨の摺り方です。

「墨はまっすぐ摺るもんだって決まってんだよな。それを、斜めに摺っている奴が多い。それを、『おかしいじゃねえか』と言ってやると、『摺り方なんてどうだっていい。墨が黒くなる点では同じじゃないか』と言い返しやがる。じゃ、聞くけど、本当に同じなのか? え?」

「おかしいじゃねえか」、とか、「おい、てめえ」とか、相手に詰問した様子を再現するときは、大音量で怒鳴ります! 別に、私が怒られているわけじゃなくても、怖いほど。思わず、背筋がシャキーンと伸びました。

物質として、黒くなるということでは、まっすぐ墨を摺ろうが、斜めであろうが、結果は同じでしょう。ただ、心構えは違います。私はこれを経験上知っている。なぜかと言うと、最近、書道のおけいこを再開したのですが、前回、習っていた時に、墨を斜めに摺っていたんです。そのままの形で残っていた墨を続けて斜めのまま使い、なぜか集中できないと感じていました。小学生の時は、先生に言われた通り、まっすぐに摺っていたというのに。

また、「おれはね、遊びも命がけなんだよ」というのも、カッコよすぎる! 好きなことにはまっしぐらで、高級車に乗っていたことも、高級カメラを使っていたことも、お話ししてくださいました。佐藤さんは、写真の腕も、すごいんですよ! きれいな写真というよりは、胸をえぐるようなメッセージを込めた作品を発表されます。あまりに強烈でジャーナリスティックな作品、私はスバラシイと思いました。

翻って私、命がけで遊んでいるとは言えないなーーがんばれ、私!

色々とお説拝聴し、「あっちにいいの、あるよ」というセクションから、まず、私が「これとこれで悩んでいるんですけど、どうでしょう?」とお伺いを立て、

「おお、それを買うか!」

と満足そうに笑顔の佐藤さん。

制作者に一緒に選んでもらって、直接買うという体験は初めて。こんなに楽しいものなんですね。

我が家に連れ帰った2体は、幸せそうにしております♪

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佐藤さんは、30年以上寝かした材木しかお使いにならないそうです。

「だから、おれのこけしは絶対に割れたりしない。大事にしてもらえれば、どんどんいい色になってくるよぉ」

来年、80歳になるのを機に東京で個展を開き、「それがおれの集大成。多分、これでこけしは引退、になるかも」ですって。奥様のお話しでも、今、すごくいいこけしが出来ているそうです。佐藤さんの人生最高の出来に近いということ? ウレシイです。

それもこれも、勇気を振り絞って、図々しくも工房をお尋ねしたからですね。出会いに乾杯!